ウイルス蔓延で50匹死亡! 猫カフェ最大手「モカ」の子猫虐待(2/2)
猫パルボウイルス(以下、パルボ)は、致死率が約95%、糞便や吐瀉物を介しての感染力が非常に強い病気である。が、ワクチンさえ打っていれば基本的に防げる“昔の病気”でもある。にもかかわらず、猫カフェ最大手「モカ」では各店舗で感染が相次いだ。8月には運営会社のケイアイコーポレーションが関東の全店での臨時休業を発表したが、実は以前にも感染症が見つかっていたと元社員は明かす。
「責任者が社長に営業休止を訴えましたが、社長は“猫が死んだら買い足せばいい”と言うだけでした」
「モカ」での感染拡大の背景にワクチン接種の不備があるとこの社員は指摘するが、加えて、猫たちの“労働環境”についてもこう強調する。

猫カフェ「モカ」
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ある猫カフェ経営者は、
「うちは生後数カ月の子猫は、30分から1時間フロアに出すごとに、3時間ほどバックヤードで休ませています。猫は自分の体力を顧みず遊びすぎてしまうので、成猫であっても、こちらから時間を制限してあげないとダメなんです」
と話すが、先の元社員によれば、モカでは違う。
「10時に開店して20時に閉店するまで、猫は免疫力が低い子猫をふくめ、10時間ぶっ通しでフロアに出され、休憩できません。モカは立地のよいところに出店しているので、来店数は1日に100人を超える。ひっきりなしに客が入れ替わる環境は、ただでさえストレス要因です」
これに対して、
「ワクチンが効いているかどうかの指標を抗体価といいますが、これが上がっていない子猫が1日10時間も店に出れば、パルボに感染するのは当たり前です」
と、見解を挟むのはれいこスペイクリニック院長の竹中玲子獣医師だが、元社員の話をさらに続ける。
「運営会社がスタジオ事業も行っているため、モカでアイドルやバンドのライブをやることも。大音量の音楽は、人間の何倍も耳がいい猫には大変なストレスで、みな脅えきって、翌日は何匹かが軟便になります。また、猫の欠員が出ると、他店からの補充で賄いますが、猫は縄張り意識が強く、急な環境の変化も多大なストレスになります」
猫の12%が死亡
ところで、不幸にもパルボに感染してしまったら、
「感染力が非常に強いので、ケージに敷く板や布類など、ウイルスが染み込む可能性があるものは、完全に処分しなければいけません」
と竹中獣医師は言うが、元社員によれば、
「発症した猫のケージも捨てなければ、下に敷くボードも交換せず、消毒だけで済ませていました」
続いて、ほかの元従業員もこう告白する。
「パルボ以外の病気も頻発し、子猫の致死率ほぼ100%のFIP(猫伝染性腹膜炎)で死ぬ猫も多い。毛が抜けて発疹が出る真菌という病気も見られ、これは人間にも感染しますが、モカではそういう猫もフロアに出します。モカは社長の方針で3歳以下の猫しか扱いませんが、大勢の若い猫がこういう病気で死んでいる事実上の見殺しで、従業員も苦しんでいます」
本誌(「週刊新潮」)は、ほかにも内部資料を入手した。そこには猫の死亡日、店舗、名前、性別、誕生日、猫種などが書かれており、死んだ猫の数は合計49におよぶ。
「リストの作成後に死んだ猫を加えると50。これら資料によると、3年半ほどの間にモカに在籍した猫は420匹前後。その12%が死んでしまったのです」(同)
前出とは別の猫カフェ経営者が言うには、
「われわれが知る猫カフェで、3歳以下の猫が死んだのは1社だけ。その会社でも80匹中2匹、つまり2・5%にすぎません」
モカの運営会社は…
再び内部資料である。従業員向けのマニュアルには、〈お客様にもし聞かれた時の言い方です〉などと書かれた下に、こう細かい指示が記されている。
〈・猫が亡くなった→ブリーダーさんの元に帰りました〉〈・隔離治療中→裏で休憩中です、おやすみしています〉〈・病院へ行く姿を見られて聞かれた時→定期的な健康診断です〉
さて、モカに取材を申し込むと、顧問弁護士の名で返答があった。以前にもパルボに感染した事例があったことは認めながらも、
「一般的に行われているパルボウイルス対策はすべて実施しておりました。それでも今回のことが起きてしまい、感染力の強さを痛感しております」
と、モカでだけ「昔の病気」が発症しているのに他人事のようだ。そして猫の死亡率が高いことも、マニュアルの存在も否定した。
だが、あたかも収容所での苦役のような虐待は、数百万の飼い主、その何倍もの愛猫家を敵に回すことだと知るべきだろう。
「週刊新潮」2018年10月4日号 掲載
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